目次
◎本記事を読むべき対象者
- 技術士二次試験の受験者
令和3年度の技術士二次試験まで、およそ2ヶ月となりました。今回は、解答論文の記述の際に留意しておくべき点について、箇条書きで整理しました。受験者は必見の内容です。
◎全設問共通の留意点
- 否定文は使わない。(「〇〇は△△でない。」と記述すると、読み手が「何なら良いのか」と突っ込みを入れたくなり、印象が悪い。)
- 読みにくいため重文は控える。(※重文:主語と述語を備えた部分を2つ以上含む文)
- 主語、目的語、修飾語などを明確にする。
- 読点(、)は列挙する際の区切り、中点は(・)一つのグループに属する意味で用いる。(例:色、形、サイズ 青・緑・赤)
- 英数字は半角可。
- ICTといった略語はそれぞれ1マス使う。
- 1つの数字は分断(改行)しない。
- 単位はマスにとらわれない。(kN/m2→2マス)
- カタカナは全角。
- 技術用語、学術用語を用いる。商品名、メーカー名は使用しない。
- 図には数字入れる
- 必ずしもタイトルで改行しなくても良い。(「ータイトルー:ー本文ー」)記述スペースがなくなった際に有効。
◎設問Ⅰ(Ⅲ)の留意点
時間配分目安(2時間)
- 論文構成→15分
- (1)→30分
- (2)→30分
- (3)(4)→30分
- 時間余裕15分
課題と問題の違い
- 問題:現状があるべき姿になっていない阻害要因。目標の姿と現状のギャップ。
- 課題:問題(あるべき姿を妨げる要因)を解決するためにやること。
- 例:(問題)地震発生時に火災が広がりやすく、消防車や救急車が入り込めない。(課題)密集市街地の解消。
- 技術者が解決できる課題。
- 法律の制定や予算増などは技術者の立場を超えるためNG。
- 予算がないことが課題ではなくて、問題点。
論文作成のステップ
- 現状把握:客観的なデータに基づく現状を把握する。
- 背景の考察:なぜそのような現状に至ったか。なぜ問題が生じたかの理由を考える。(例:維持管理が求められる背景→我が国の社会資本が高度成長期に集中的に整備され、現在一斉に更新の時期を迎える。そのため、莫大な量の社会資本ストックの維持管理が必要。)
- 問題点の整理(問題点:現在起こっているマイナスな影響を与える事実、またはこのまま放置した場合に将来発生する可能性のある潜在的な事実のこと。あるべき姿と現状のギャップ)(例:笹子トンネル天井板の落下事故のように安全上のリスクが高まっていることや、平時において事故とならなくても、老朽化して機能低下を起こしている箇所は、地震のような災害時に弱部となる可能性が高いこと。更に地方公共団体においては、人員や予算不足のため、点検すら行っていないこと。)
- 課題の設定:負のギャップ(問題点)をあるべき姿に持っていくためにはどういうことに取り組まなければならないか。取り組むべきテーマ=課題。
- 解決策の提案(NGワード:「適切な」「効率的な」 適切な、または効率的な解決策を行うための課題の解決策を述べる。)
- 解決策の問題点:解決策が現在実行されていないことが、新たなリスクやリスク対応策となる。解決策実施にあたっての課題。(解決策がアセットマネジメントの場合の例:役所にアセットマネジメントを実施するだけの技術力や能力を持った人材が不足している。各構造物のデータが不足しているなど。)
(1)の書き方
- 問題(マイナスの現状)→課題
(2)の書き方
- 最も重要な課題は解決されると最も影響の大きいことを書く。
- 解決策は、課題をどうやって実現するかを書く。
- 問題:理想と現実のギャップ
- 課題:理想と現実のギャップを埋めるための取組
- 解決策:どうやって実現するか
(3)の考え方
- 解決策それぞれのリスクを書くことはNG。共通して生じるリスクを書く。解決策を見るのではなく、最も重要な課題を見ることで、共通して新たに生じるリスクが見えてくる。
- リスクは危険の生じる可能性のこと。
- リスク対応策は危険の生じる可能性を低減すること。取り上げた複数の解決策を行うことで生じる副作用。
- リスク=発生確率×被害規模→リスク対応策は発生確率を下げるあるいは両方という視点で考える。
- 例1 経済的管理:コスト増加(LCCの増加)、工期に間に合わない、品質低下、新規設備の必要性
- 例2 人的資源管理:人材育成、機会の喪失、社員モチベーションの低下、人材流出、新規雇用できない、賃金の低下
- 例3 情報管理:情報漏えい、通常時・緊急時の情報管理、情報セキュリティの低下
- 例4 安全管理:リスクアセスメント、労働安全衛生管理、社員の安全管理、第三者の安全管理、危機管理
- 例5 社会環境管理:環境保全、CO2排出量増加、生物多様性への悪影響、廃棄物増加、化学物質の漏えい
課題:インフラの更新時期の平準化
解決策:アセットマネジメントの導入
リスク:インフラの維持管理の多くを担当するちほにおいて、アセットマネジメントを推進できる人材がいない。このため職員教育により多くのコストがかかる可能性がある。アセットマネジメントは老朽化曲線をもとに予防保全を行う。技術力が不足していれば、更新時期の見積もりを見誤り、危険状態が放置される可能性もある。
リスク低減策:CM方式を導入する。
(4)の書き方
技術者倫理
- 「(1)~(3)の業務遂行にあたり」と記載されているため、技術士会で定義されている文章そのままはNG。
- 例えば、生産性向上の場合はデータ偽装などの不正行為を行わないということ。労働力や労働時間が少なくなる中で生産性量を増強させる方法とし手抜き工事があげられる。手抜きといかなくても品質を下げるという手段がある。
持続可能性の観点
- 持続可能性とは「現代の世代が将来の世代の利益や要求を充足する能力を損なわない範囲内で環境を利用し、要求を満たしていくこと」である。将来世代、未来の建設業界、未来の国土を意識した記述であること。
論文骨子
出題テーマ
↓
課題①、課題②、課題③
↓
最も重要な課題
↓
解決策①、解決策②、解決策③
↓ ↓ ↓
共通して新たに生じるリスク
↓
リスク対応策(低減策)
↓
技術者倫理、持続可能性
◎参考文献
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