本記事を読むべき対象者
- 高速道路の安全・安心についての取組を知りたい方
- 技術士二次試験建設部門道路分野の受験者(設問Ⅱ、Ⅲ対策)
- 技術者二次試験建設部門の受験者(設問Ⅰ対策)
早いもので、技術士試験日まで残り1ヶ月程度となりました。
今回は道路分野受験者に向けて、絶対におさえておくべきキーワード「高速道路の安全・安心基本計画」について整理しました。設問ⅡでもⅢでも、出題されそうです。
また、道路分野以外の受験者でも、設問Ⅰの解決策で記述できる内容が盛り沢山のため、抑えておく方が有利になる内容です。他分野の受験者でも、道路の内容は割と理解しやすいので、記述しやすいと思います。
「高速道路の安全・安心基本計画」の背景
- 高速道路の85%が開通済であるが、その約4割が暫定2車線供用区間である。そのため、高速道路ネットワークの進展に伴う更なる機能向上が要請されている。
- 地球規模の気象変動により激甚化する台風や集中豪雨、また大規模地震などの災害が懸念される中、耐災害性として高速道路のネットワークへの期待が集まる。
- 減少しているものの、逆走事故や誤進入が依然として発生しており、高速道路における安全上の課題として顕在化している。特に、高齢者ドライバーによる事故は深刻な課題である。
- 働き方改革や生産年齢人口の低下等により、生産性向上に対する社会的要請が強まっている。高速道路においては、人やモノの移動の基幹となるため、移動時間の短縮が要請される。
→ネットワークをつなぐという高速道路の水平展開は概ね完了している。今後は、形成された高速道路ネットワークを、安全性、信頼性、使いやすさを向上する観点から、更なる機能強化を図っていく段階である。
「高速道路の安全・安心基本計画」の具体策
(1)暫定2車線区間の解消
1)計画的な4車線化の推進
暫定2車線は、国際的にも稀な構造であるとともに、速度低下や対面通行の安全性、通行止めリスク等の課題が存在する。有料の暫定2車線区間においては、①時間信頼性確保②事故防止③ネットワークの代替性確保、の観点により優先的に整備する。
4車線化事業は時間を要することから、対面通行区間の当面の緊急対策としてワイヤロープなどを設置する。土工部について2022年度内の設置を目標とする。
(2)自動運転などのイノベーションによる高速道路の進化
1)自動運転に対応した道路空間の基準等の整備
- 2020年目度に高速道路での自家用車自動運転(レベル3)を実現。
- 2025年目度に高速道路での自家用車完全自動運転(レベル4)を実現。
- 2022年以降に東京-大阪間の後続車無人隊列走行システムの商業化。
2)高速トラック輸送の効率化
ダブル連結トラックの利用促進に向けたインフラ環境を整備する。(駐車マスの増設、中継輸送システムの強化)
後続車無人隊列走行の実現を見据えたインフラ環境を整備する。(新東名・新名神の6車線化、本線合流部での安全対策、既存SA・PAの拡幅)
(3)世界一安全な高速道路の実現
1)事故多発地点での集中的な対策
死傷事故率が高速道路の平均の2倍以上等の事故多発地点約300箇所において、要因を分析し対策を実施する。また、自動車メーカー等と連携し、事故を未然に防ぐ対策を推進する。(ETC2.0等を活用した、事故要因分析や対策の実施。ETC2.0によるドライバーへの事故多発地点の注意喚起)
2)逆走対策
分合流部・出入口部では対策が概ね完了したこと等により、2016年からの2箇年で逆走事故は約4割減少した。
これからは、対策が遅れている一般道からの誤進入対策を推進する。また、新技術を活用し、自動車メーカーと連携し、逆走車への警告、順走者への注意喚起等の取組を加速する。(画像解析による逆走を警告するドラレコ等の開発、SA・PA等による逆走防止キャンペーン等の広報実施)
(4)ネットワークの信頼性の飛躍的向上
1)災害時の通行止め時間の最小化
- 大雨等の通行止め基準の考え方は、1973年の導入当時から変わっておらず、通行止め実施にも関わらず、災害が発生しなかった割合は99%に上る。そのため、通行止め基準を、従来の降雨量に基づく基準から、土壌雨量指数等を考慮した基準に移行し、災害発生を的確に捕捉するとともに、通行止め時間の最小化を図る。
- ハード対策としては「重要インフラの緊急点検」を踏まえた法面対策や耐震補強等を推進し、監視結果等を踏まえ更なる強靱化も検討する。
- 災害時の社会的影響の最小化のため、予測段階での通行止め可能性情報の公表や、災害発生時の柔軟な車線運用等により、早期に通行を確保する。
- 休憩施設における防災機能の強化について、道の駅の機能強化と連携させながら計画的に取り組む。
- 道路ネットワークの耐災害性評価手法の充実と沿道リスクアセスメント制度の導入を検討する。
2)工事規制の影響の最小化
本格的なメンテナンス時代を迎え、更新工事等が増加している。そのため、工事規制による渋滞の評価を行い、次の工事へ反映する工事規制マネジメントを推進する。また、国際会議・イベント等を踏まえた工事抑制期間を設定し、社会経済活動への影響を最小化したり、集中工事の実施や新技術・新工法の導入による規制時間の短縮を図る。
3)雪氷対策
気象予測を踏まえた除雪体制の強化や、利用者への出控えの呼びかけ等により、大規模滞留の抑制と通行止め時間を最小化する。また、異例の降雪時において、従来では通行止めになるような状況でもタイヤチェーン装着車を通行可能とするチェーン規制を実施し、早期の通行を確保する。
(5)利用者ニーズを踏まえた使いやすさの向上
1)休憩施設の使いやすさの改善
・物流の基幹となる高速道路において、長時間駐車等により深夜帯を中心に大型車等の駐車マス不足が問題化。
・高速道路外の休憩施設等の活用や無人PAにおけるサービス向上のための取組を推進。
・電気自動車等の普及を踏まえ、休憩施設におけるエネルギー供給のあり方についても検討。
(休憩施設の駐車マス数の拡充や兼用マスの整備、有料の駐車場予約システムの導入、ETC2.0を活用した一時退出先を限定しない運用、無人PAの解消)
2)高速バスの利便性向上
集約公共交通ターミナルを全国で戦略的に展開。
高速SA・PAを活用した高速バス間の乗換え拠点「ハイウェイバスタ」の整備、既存BSのリノベーション等の推進する。
3)訪日外国人旅行者への対応
訪日外国時旅行者数の増加を見据え、標識整備や休憩施設におけるサービスの拡充する。(SA・PAにおける外国案内所の整備、外国人のレンタカー事故防止に向けた安全対策)
4)スマートIC等による地域とのアクセス強化
日本の高速道路のIC間隔は平均約10kmとなっており、欧米諸国の平地部における無料の高速道路の2倍程度である。そのため、平地部でのIC間隔が欧米諸国並みの約5kmとなるようスマートICなどの整備を推進する。また、無利子貸付等インセンティブ制度も活用し、民間施設直結スマートICを積極的に誘致する。
5)現地の交通状況に応じた
ドライバーストレス軽減のため、警察と連携し、現地の交通状況に応じ、車線の弾力的な運用変更や規制速度の見直し等を実施する。(新東名・新北道における規制速度120km/hの試行)
参考文献
https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_001229.html
「高速道路における安全・安心基本計画」の公表について