国や地方自治体が実施している幹線道における交通安全対策について、道路技術者のわたしが解説します。幹線道路における交通事故は非常に多いため、自動車運転者は必見の内容です。
また、技術士試験道路部門受験者は抑えておくべき内容です。
◎幹線道路の交通安全対策
○死傷事故の実態
幹線道路における死傷事故の69%が全体の20%の区間に集中していることが分かっています。(全国の幹線道路を約71万区間に分割し、H19〜22年の事故データとH22年の交通量データを基に、各区間の死傷事故率を算出)
○事故危険箇所の抽出
以上より、幹線道路において集中的な交通安全対策を実施することを目的に、警察庁と国土交通省が合同で、死傷事故率が高く、又は死傷事故が多発している交差点や単路部を”事故危険箇所”として指定しました。(H29.1)
○交通安全対策の目標
そして、H32年度末までに事故危険箇所における死傷事故件数を約3割抑止を、国は目標として掲げております。
○交通安全対策例
具体的な交通安全対策例を紹介します。
(1)道路改良
【①右折車線の延伸】
右折車線長不足により直進車線まで延びた右折待ち車両の列に、直進車が追突する事故が生じております。
そのため、右折車線を延伸し、十分な右折車線長を確保することで交通安全対策に繋げます。
【②歩道整備】
歩行者の安全確保のため、歩道を整備し、交通安全対策に繋げます。
【③導流路半径の縮小】
左折時の車両走行速度が高くなり、横断歩行者および横断自転車を見落とし、事故が発生します。
そのため、導流路半径の縮小することで、車両が速度を出したまま左折することが困難になり、交通安全対策になります。
【④往復交通の分離】
中央分離帯を設置し、往復の交通流を分離することにより、対向車線への逸走による正面衝突等の重大事故を防止します。
(2)交通安全施設
【①防護柵の設置】
車両の路外逸脱を防止し、乗員および歩行者等への被害を防止します。そのため、防護柵を設置し、交通安全対策とします。
【②導流標示の設置】
右折時の走行位置が不明確であり、歩行者および対向車へ注意できなくなり、衝突する事故が発生しています。
そのため、交差点に導流標示を設置し、走行位置を明確化することで、交通安全対策に繋げます。
【③注意喚起表示(LED表示版)の設置】
事故の危険性がある箇所や急カーブ箇所等でドライバーに注意を促すため、注意喚起標示を設置し、交通安全対策に繋げます。
【④視線誘導標の設置】
曲線区間において、車両の車線逸脱による事故が発生しています。
そのため、視線誘導標を設置し、曲線の線形を把握しやすいようにして、交通安全対策に繋げます。
(3)ビッグデータを活用した対策
ETC2.0等の車載器によって、送信されるビッグデータにより、急ブレーキ多発箇所を特定します。
例えば、特定した箇所の植栽帯が見通しを阻害していれば、剪定することで交通安全対策になります。
○今後の交通安全対策(事故ゼロプラン)
限られた予算で、交通安全対策を実施するためには、効率的・効果的に執行し、成果を上げていく必要があります。
このため、国はデータ 等に基づく成果を上げるマネジメントの取組みを導入し、交通安全分野における成果を上げるマネジメントを事故ゼロプラン(事故危険区間解消作戦)として展開しています。
事故ゼロプランでは、選択と集中、市民参加・市民との協働をキーワードとして、事故データや地方公共団体・市民からの指摘等に基づき、交通事故の危険性が高い区間を選定します。
地域住民への注意喚起や事故要因に即した対策を重点的・集中的に講じることにより、効率的・効果的な交通安全対策を推進する。完了後はその効果を計測・評価し、マネジメントサイクルにより逐次改善を図ります。
◎最後に
幹線道路における交通安全対策は、これまではハード面が中心でしたが、徐々にソフト面との組み合わせによる対策が増加してきました。
限られた予算内で、効果的に交通安全対策を講じることが今後の重要なポイントです。
参考文献:国交省HP
それでは~