◎本記事を読むべき対象者
- 近い未来の日本のまちがどうなるか気になる人
- 技術士試験受験者
2040年までに、道路を含むまちの景色が徐々に変化していきます。道路技術者のわたしが、前編の内容を踏まえ、後編として具体的な道路政策について記述します。後編は3編構成で、本記事は3/3になります。
【時代の変化についていけ】2040年,道路の景色が変わる!?(前編)
【時代の変化についていけ】2040年,道路の景色が変わる!?(後編1/3)
【時代の変化についていけ】2040年,道路の景色が変わる!?(後編2/3)
◎道路行政が目指す「持続可能な社会の姿」と「政策の方向性」
前編で記述した将来像を踏まえ、将来世代にわたって人々の幸せの実現に貢献できるよう、概ね20年後を見据え、道路政策を通じて実現を目指す3つの社会像と政策の方向性が提案されております。本記事では社会像3について記述します。
社会像3.国土の災害脆弱性とインフラ老朽化を克服した安全に安心して暮らせる社会
▶データその①
- 世界都市リスク指標(2018年):東京第1位大阪第6位(英国の保険組織ロイズによる)
自然災害等も含め、日本の2都市がリスク都市と評価されています。更に、コロナの拡大を受け、パンデミックと自然災害の複合災害への対策も講じる必要があります。
▶データその②
- 首都直下地震:今後30年以内にM7クラスが70%程度の確率で発生
- 南海トラフ地震:今後30年以内にM8~9クラスが70%程度の確率で発生
- 50mm/h超の短時間強雨件数(1976-86平均→2008-18平均):174回→238回
- 地球温暖化の影響(今世紀末):地球全体の台風数は約2割減、台風の強風域の面積が約2割拡大
- 最深積雪が観測史上最高を更新した地点(2019-20):112地点
近年、自然災害の規模が増大しており、今後増大していくと予想されます。また、30年以内には大地震が高確率で発生します。
▶データその③
- 日本の温室効果ガス排出削減目標(パリ協定):2050年までに2013年度比80%削減
- 運輸部門の二酸化炭素排出量:2.1億トン、17.9%、うち9割が自動車由来(2017)
- 自動車の低炭素化:2050年のCO2削減目標達成には新車販売台数に占めるZEV等の次世代自動車の割合を100%とする必要
気候変動に対しては防災・減災対策等の適応策とともに、温室効果ガスを削減する緩和策が必要です。2050年には販売される新車のすべてをゼロ・エミッション車とする必要があるという予測もされており、道路交通システムの低炭素化が急務となっています。
※ゼロ・エミッション車:有害物質を全く排出しない電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)を指す。
▶データその④
- 建設後50年以上の道路橋の割合(2018→2038):25%→72%
- 早期に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅲ):10%(62,299橋)
- 緊急に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅳ):0.1%(678橋)
- 予防保全による道路の維持修繕・更新費の推計(2018→2038→2048):1.9→2.7→2.2 (兆円)
急速に進展するインフラの老朽化に対し、道路ネットワークを持続的に機能させるためには、道路管理者が連携して計画的なメンテナンスを行っていく必要があります。特に、老朽化ストックの増加や働き手の減少等を踏まえると、新技術を活用した自動化や省力化の推進、予防保全型メンテナンスによるコスト抑制が不可欠となります。
【データまとめ】パンデミックを含む災害は国家や地域の成長軌道を一瞬にして破壊する力を持ち、日本が持続的な成長を目指す上での大きな課題です。新技術をフル活用して、国土の災害脆弱性や気候変動、インフラ老朽化という課題を克服し、誰もが安全に安心して暮らせる社会の構築を目指すべきです。
政策の方向性⑧:災害から人と暮らしを守る道路
【主旨】
激甚化・広域化する災害に対し、耐災害性を備えた幹線道路ネットワークが被災地への人流・物流を切れ目なく確保し、人命や経済の損失を最小化します。
【具体イメージ】
- 太平洋・中央・日本海の縦貫道、これらを連絡する横断道、都市圏の環状道路においてトンネル、橋梁、盛土等の構造物の耐災害性能を統一的に確保し、災害時にもネットワークとして速やかに機能
- 無電柱化された道路が停電なく電力供給や通信を確保し、緊急輸送道路としても機能
- AIカメラ等が交通の状況を常時モニタリングし、災害やパンデミック発生時には情報提供や交通誘導により人流・物流を最適化
- 災害モードの高速道路が、浸水エリアにおける避難スペース、被災地アクセス用の緊急出入口を提供。道の駅やSA/PA 等が、避難場所、救援拠点、物資中継基地として機能
政策の方向性⑨:道路交通の低炭素化
【主旨】
EV、FCV、公共交通や自転車等の組み合わせによる低炭素道路交通システムが地球温暖化を抑制します。
【具体イメージ】
- 道路インフラの電源が再生可能エネルギーに転換。新技術・新材料の活用や緑化等により、道路の整備から管理に至るライフサイクル全体を通じて二酸化炭素の排出が抑制
- 非接触給電システムや水素ステーションが、道路施設として適正配置され、電気自動車や燃料電池車への転換が加速
- 低炭素公共交通システムとして、自動運転化されたBRT(バス高速輸送システム)やBHLS(路面電車なみの機能を備えた次世代バスサービス)が専用レーンを運行
- シェアサイクルポート、駐輪場、自転車道ネットワーク等、安全で快適な自転車利用環境が整備
政策の方向性⑩:道路ネットワークの長寿命化
【主旨】
AI等の新技術の導入により効率化・高度化された予防保全型メンテナンスにより、道路ネットワークが持続的に機能します。
【具体イメージ】
- AIや新たな計測・モニタリング技術、施工手間を縮減する新材料、点検箇所を減らす
- 新構造等の活用により、道路の点検・診断が自動化・省力化
- 道路管理用車両等の自動化により、道路清掃、落下物回収、除草、除雪等の維持管理作業が省力化
- 道路管理者が連携して計画的な点検・修繕、道路施設の集約化・機能縮小を行うことで、地域の道路ネットワーク機能が持続的に維持
- 道路協力団体等が参画し、地域の道路のきめ細かな維持管理が実現
◎おわりに
本記事でようやく“2040年、道路の景色が変わる”については終わりです。本記事の社会像3では、災害大国である我が国において、これから人材難、社会資本の老朽が進む中で、いかにして持続的な社会を構築するかについて、記述されていました。また、環境に配慮し、低炭素化も謳われております。
全編を通して、これから目まぐるしく時代が変化する中で、道路も変革が求められていることがわかりました。これまでの記事でも述べたように、自動運転やMaaSが重要なキーワードであり、新技術をどんどん導入していく必要があります。必要があるというよりは絶対に成し遂げなければなりません。
それでは~
参考文献:https://www.mlit.go.jp/road/vision/01.html